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2023年6月9日以降、新型コロナウイルス関連の入国規制は解除されており、インドネシア入国時の陰性証明書、ワクチン接種証明書の提示は不要、入国規制等も撤廃となっています。
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バリ州政府は、バリ州の文化及び自然の保護を目的として、2024年2月14日から、バリ島を訪問する外国人観光客に対し、「外国人観光客徴収金」を課し、一人あたり15万ルピアの徴収を開始する予定です。
在インドネシア日本国大使館:バリ州が徴収を予定している「外国人観光客徴収金」について | 在インドネシア日本国大使館
世界中にある全ての宗教や文化には、新年を祝う独自の方法があります。
例えば、中華圏をはじめとしたアジアのいくつかの国では旧正月、イスラム社会にはムハッラム(مُحَرَّم:Muharram)があり、グレゴリオ歴を使用している世界中の人々は1月1日に新年を祝います。
世界中の多くでは、新年を盛大なパーティや花火で迎えますが、それとは対照的にバリでは静かに新年を迎えます。
これは、ニュピの日と呼ばれ、春分のティルム(Tilem:新月)の翌日にあたり、西暦78年に始まったサカ暦の新年が始まります。
ニュピの日は、バリ島内の全ての活動が停止され、空港の離発着もなく、通りからは人が消え、観光はもちろん、ちょっとした買い物もすることができず、バリの街は独特な空気が漂っています。
そんな静寂に包まれたバリの新年であるニュピについて紹介したいと思います。
ニュピ(Nyepi):バリ島の新年を祝う静寂の日
バリ島では、様々な暦法を使用していて、ビジネス上などではグレゴリオ暦を使用していますが、寺院の祝日、家の建築や結婚式、葬式などは、主に二つの暦法「パウコン暦(Pawukon:ウク暦)」と「サカ暦(Bali saka)」が使用されています。
パウコン暦(ウク暦)は、14世紀にジャワから持ち込まれ、210日を10個の週に分けられたもので、サカ暦は、5世紀中頃に南インドから持ち込まれた太陽暦で、1年は12カ月で構成されており、グレゴリオ暦にほぼ沿ったものですが、各月は新月で終わり、グレゴリオ暦より78年遅れたものになっています。
バリのサカ暦のカレンダー上で新年にあたるニュピの日は、バリ・ヒンドゥー教徒にとって一年で最も重要な日であり、バリ島全土が静寂に包まれます。
全ての世俗的な活動が停止し、精神修養の日となっています。
この時期にバリ島にいる場合、またはニュピの日にバリ島に到着する場合は、必ず現地の人々の指示に従う必要があります。
ニュピの日は午前5時に始まり、その後24時間続きます。
この日は空港も完全に閉鎖され、この祝日は世界中の全ての接続空港に通知されていて、バリ島の空港への到着便もないため、ニュピの日にバリ島に到着する計画は避けましょう。
ニュピの日は全てのお店が開いていないため、食事や買い物が必要な場合は前日までに済ませる必要があり、また、ツアーなどバリ島中のアクティビティが停止されているため、観光などのアクティビティを楽しむことはできません。
現地の警備員が常駐していて、旅行客を含む全員がニュピの日の戒律を遵守するよう努めています。
今年のニュピの日は、2024年3月11日(グレゴリオ暦)で、1946年のサカ暦の新年を祝います。
西暦 | バリの年 | ニュピの日 |
---|---|---|
2022 | 1944 | 3月3日 |
2023 | 1945 | 3月22日 |
2024 | 1946 | 3月11日 |
2025 | 1947 | 3月29日 |
2026 | 1948 | 3月19日 |
ニュピは、祈りを通して自己と神(ヒャン・ウィディ・ワサ:Hyang Widhi Wasa)をより密接に繋げるための日であり、同時に自身を振り返りながら、人間、愛、やさしさ、忍耐etc...人々の間にある真の連帯感と寛容さを高め、相違点と類似点を人間の自然な要素として受け入れ、人生を前向きな方向に導いて頂けるよう祈ります。
それぞれの違いを理由に互いに争うことはしません。
ニュピの日:一連の儀式
ニュピの日の前後は、ニュピと一緒に行われる一連の儀式が3~4日に渡りあり、これは浄化を意味する海(Pura Segara)の近くの寺院で行われ、神の像が海からの神聖な水を得る儀式になっています。
メラスティ(Melasti):浄化の儀式
ニュピの日の2~3日前に、ヒンドゥー教徒はメラスティと呼ばれる儀式を行って浄化を行います。
この日、それぞれの寺院にある神の像プラティマ(Pratima)やプラリンガ(Pralingga)などがガムラン楽団(Gamelan orchestra)の演奏と共に、長い列を組んでビーチや川に運ぶのですが、村人全員が伝統的な寺院の衣装を着てその後を歩き、その行列がビーチに入ると、海に向かって祈りが捧げられます。
ビーチでの儀式が終わると、行列は村に戻り、プラティマやプラリンガが寺院に戻され、ニュピの日の前夜までいくつかの祈りが行われます。
バリ人にとってメラスティの儀式は、人間と宇宙の全ての不純物を浄化し、海から生命の源を取り出すこととされています。
これは、海は、喜びと悲しみが一貫して存在する人生そのものの象徴とされているからです。
その喜びや悲しみの中に、私たちは人生の本質を見つけることができるのです。
タウル・ケサンガとカル(Tawur Kesanga and Caru):生贄の儀式
タウル・ケサンガとカルは、ニュピの日の前日に行われる生贄の儀式です。
州や村、地区ごとに、鶏、アヒル、豚、ヤギや牛を作物と一緒にお供え物としてささげます。
バリ人は、動物を飼育し、植物を育てることが奨励されていて、儀式にこれらの動植物を犠牲として使用することで、保存への意欲を高めているのです。
動物を飼育し植物を育てなければ、儀式活動を行うことができず生命の源を失うことになるのです。
この儀式を通して、人間が暮らしていくために必要な家畜や作物の大切さを知る事と共に、バタラ・カラ(Batara Kala)を鎮めることも意味しています。
儀式自体は、正午頃に村の交差点で行われますが、家の境内でも小規模な儀式が行われ、一連のお供え物が各家の正門に捧げられていて、家族全員で祈りを捧げ、自分たちの中にある悪い力「ブータ(Bhutha)」を中和するとされています。
その日の午後5~6時頃には、プングルップカン(Pengrupukan)の儀式が行われます。
プングルップカンでは、それぞれの地区のストリートで、勢いよく火のついた松明を持ち、クルクル(kulkul)と言われる伝統的な竹の鐘を鳴らしながらパレードが行われます。
このパレードには、ブータや悪霊の象徴として作られたオゴオゴ(Ogoh-Ogoh)という巨大な人形が参加します。
パレードの後、悪霊の象徴であるオゴオゴは、喜びと共に燃やされ、その炎は生活の中の全ての悪の影響の浄化を象徴しているとされています。
人間と神、人間と人間、人間と環境の間に調和の取れた関係を築くために、タウル・ケサンガは各家庭から社会全体で行われています。
オゴオゴのパレードを見るには、クタ、スミニャック、ヌサドゥア、サヌールなどのビーチ周辺が最適です。
ホテル近くにあるビーチであれば、どの部分がパレードに使用されているのか、いつパレードが行われるのか、ホテルの人に尋ねてみましょう。
通りで白と黄色の服を着てパレードに参加している人々を見かけたら、その人々に従うようにしましょう。
また、パレードに参加する場合は、サロンやサッシュなど、適切な服装をして、万一ビーチでビキニを着ているときにパレードが通り過ぎる場合は、上着を羽織ったり、しばらくその場所から離れるようにしましょう。
ニュピの日の前日の朝は、オゴオゴが道路脇などに設置されるので、特別な光景を見ることができ、また、写真撮影には一番適した時間になっています。
サヌール、クタ、デンパサール、ウブドなどの主要都市では、最高のオゴオゴを決めるコンテストも開催されます。
ニュピの日:静寂の日
賑やかなニュピ前日の後、バリ島は静寂に包まれた一日が始まります。
どの通りも静かで、本来の日常生活をしている人は誰もいない状態になり、バリ全土での活動が24時間停止されます。
この日、バリ島の一般的なヒンドゥー教徒が遵守すべき「Catur Brata Penyepian」とよばれる4つの戒律があります。
その内容は、火や光の使用を控える「アマティ・ゲニ(Amati geni)」、仕事などの活動をしてはいけない「アマティ・カリヤ(Amati karya)」、道楽を控える「アマティ・レラングアン(Amati lelanguan)」、家から出ない「アマティ・レルンガン(Amati lelungan)」の4つになります。
これらの戒律は、人々が心と知恵によって五感をコントロールし、新年の生活の質を高めることに役立つとされており、より高い霊的能力を持つ人、または、より高い霊的生活を送りたい人は、飲食をしない断食、会話をしない、神に心を集中させて瞑想することなど、さらに戒律を追加して実行する人もいます。
ニュピの日のバリ島の街には、バリ島の伝統的な警備員であるペカラン(Pecalangs)がニュピを妨害するあらゆる活動を阻止するために、通りで警備をしていて、車だけでなく人も通行禁止となります。
照明は最小限に抑えられていて、ラジオやテレビの音量も下げられ、もちろん誰も仕事をしていません。
一日中、犬や猫の鳴き声、虫の鳴き声だけが聞こえる、シンプルで静かな長い一日になります。
ゲンバク・ゲニ(Ngembak Geni):許しの日
ニュピの日の翌日であるCatur Berata Penyepianが終わる日はゲンバク・ゲニと呼ばれ、バリ人は親戚や友人を訪ねて幸せを分かち合います。
この日は境内で簡単な神事のみが執り行われます。
新年はヒンドゥー教徒の社会がお互いを許しあい、昨年の憎しみを忘れ力を合わせて新年の課題に立ち向かうことから始まります。
ニュピの日:バリ島のお正月は満天の星空が観られる絶好の日
ニュピの日は、「外出禁止」「火気・電気使用禁止」「労働禁止」「歓楽禁止」と定められていて、これはバリ・ヒンドゥー教徒だけではなく、バリ島全土での規制となっています。
その為、バリ島に住む外国人やヒンドゥー教徒以外の人、旅行で訪れた観光客もニュピの戒律に従わなければいけません。
ニュピの日の夜は、家庭からの明かりが漏れることでさえも禁止されているので、世の中の明かりという明かりが全て遮断されます。
全てが停止したバリ島中の夜は、明かりが消え、空には満天の星空を見ることができます。
また、ニュピの日は必ず新月なので、お天気さえ良ければ本当にキラキラと輝く星空を堪能することができます。
新月のニュピは満天の星空!最高の贅沢な時間です。
ニュピの日:ホテルの選択は大事!!
ニュピの日は、ホテルの選択を間違うと、本当に長く無駄に感じる一日を過ごすことになります。
リゾートホテルなどでは、外国人観光客を考慮し、ある程度ホテル敷地内であれば自由に行動できるようになっていますが、小さなホテルやゲストハウスなどは、一日自室で過ごすことになり、狭い空間で悶々とする時間になります。
ニュピ当日は、外出禁止なので、ご飯を食べに行くことも、ちょっとした買い物に出ることもできません。
例えば一軒家のヴィラなどは広々とした空間で過ごしやすいかもしれませんが、食事を3食用意するためには、前日までに買い出しなどが必要になります。
何か足りなくても買い出しに行くことも不可能です。
そのため、宿泊するホテルは大きめのリゾートホテルがお薦めです。
リゾートホテルでも、外に光が漏れないようにプールやレストランなどの営業時間が短くなったり、営業を中止したりする場所もあるので、予約前に必ず調べておくようにしましょう。
また、バリ島内のホテルはニュピの日に合わせたパッケージを販売しているホテルもあり、この期間に敢えて旅行をして、ホテルでのんびり過ごす人もたくさんいるのです。
最後に・・・
ニュピは宗教的及び哲学的な観点から、人間性、愛、忍耐、優しさなど、永遠に保たれるべき価値観を決定するための自己内省の日であることを意味しています。
バリ・ヒンドゥー教には様々なお祝いがありますが、ニュピはその中でも最も重要であり、特に観光地化されていないバリ島南部の村などでは、ニュピの戒律が重く真剣に受け止められています。
観光客を受け入れるホテルなどは、ニュピの厳格な戒律から免除されていますが、敷地外の通りは、歩行者や車両の通行が閉鎖され、人々がビーチに近づかないように厳しく取り締まりが行われています。
そのため、バリ島のニュピの日に滞在する場合は、屋内で過ごす計画を立てるようにしましょう。
普段は体験することのできないバリ島の新年を体験してみてください。