ピエンツァ観光:理想のルネサンス都市を訪ねて【イタリア】

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2023年4月29日以降、新型コロナウイルス関連の入国規制は解除されており、イタリア入国時の陰性証明書、ワクチン接種証明書の提示は不要、入国規制等も撤廃となっています。

 

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EUでは、テロの脅威、観光客の増加、継続する地域への移民流入への対応として、ヨーロッパ旅行情報認証システム(ETIAS:事前渡航認証システム)を開始する予定で、欧州旅行情報認証制度、またはETIASビザ免除は、2024年に日本からヨーロッパへ旅行するための旅行要件となります。

日本国籍保持者がヨーロッパを旅行する場合、ETIASビザ免除をオンラインで申請する必要があります。

公式サイト:ETIAS(エティアス)EU 申請ウェブサイト | ETIAS application site

 

イタリア中部に位置する美しい田園地帯が広がるトスカーナの古都シエナ(Siena)から1時間とちょっと。

オルチャ渓谷と呼ばれる美しい渓谷にピエンツァ(Pienza)という小さな町があります。

 

世界遺産にも登録されているオルチャ渓谷のなだらかな起伏のある丘と素晴らしい自然の風景に囲まれている町で、オルチャ渓谷全体を一望できる丘の上にあり、素晴らしい景色を眺めることができます。

 

 

のどかな風景が広がる小さな町は、ローマ法王ゆかりの地でもあることから、いつも多くの人で賑わっています。

 

この記事では、トスカーナ地方ののんびりとした雰囲気に包まれたピエンツァの町を紹介します。

 

 

File:Pienza view.jpg

 

ピエンツァ観光:理想のルネサンス都市を訪ねて

もともとこの場所は、1462年までコルシニャーノ(Corsignano)という小さな村があるだけだったのですが、1458年にこの村の出身である人文主義者アエネアス・シルウィウス・ピッコローミニ(Enea Silvio Piccolomini)がローマ法王(ピウス2世:Pius II)に就任したことで、この村の歴史は大きく変わりました。

 

彼の生まれ故郷であるコルシニャーノを「ルネッサンスの理想都市(ideal city of the Renaissance)」とするべく、初期ルネサンスの人文主義者で建築家でもあるレオン・バッティスタ・アルベルティ(Leon Battista Alberti)指導の下、フィレンツェの建築家ベルナルド・ロッセリーノ(Bernard Rossellino)を招聘し、この村の都市計画がスタートしました。

 

1464年、ピウス2世の死によって、この都市計画は時期尚早に終了しましたが、それまでに建てられた大聖堂や宮殿、広場などはルネサンス期の貴重な建造物として、1996年に「ピエンツァ市街の歴史地区(Historic Centre of the City of Pienza)」としてユネスコ世界遺産に登録されました。

 

 

オルチャ渓谷を数日間旅行する予定がある場合、ピエンツァの街は中心拠点として最適の場所です。

 

ピエンツァから約10km西にはサン・クイーリコ・ドルチャ(San Quirico d'Orcia)とその先にモンタルチーノがあり、東にはモンテプルチャーノ(Montepulciano)があります。

また、ピエンツァのすぐ南にある小さな中世の村モンティッキエッロ(Monticchiello)や、温泉で有名なバーニョ・ヴィニョーニ(Bagno Vignoni)などもあります。

 

オルチャ渓谷とクレテセネージ(Crete Senesi)の素晴らしい景色を人生一度は観てみたいと思いませんか。

 

ピエンツァ:観光

ピウス2世の都市計画プロジェクトによって、サンタ・マリア・アッスンタ大聖堂(Duomo di Santa Maria Assunta)、ピッコロミニ宮殿(Palazzo Piccolomini)、市庁舎(Comune di Pienza)、そしてこれら全ての建物が見下ろす美しい中央広場などが、わずか3年で完成しました。

 

大聖堂の右側にあるピッコロミニ宮殿には、オルチャ渓谷にあるモンタルチーノ(Montalcino)からアミアタ山(Monte Amiata)までのパノラマを観ることができる美しい空中庭園を備えた素晴らしいロッジア(loggia)があります。

 

ピッコロミニ宮殿は、フランコ・ゼッフィレッリ(Franco Zeffirelli)の有名な映画「ロミオとジュリエット」のいくつかのシーンの撮影にも使用されています。

 

ピエンツァの狭い通りを歩いていると、素晴らしい絵画に描かれたルネサンスの街を眺めているかのようです。

 

ピエンツァ観光:ピウス2世広場(Piazza Pio II)

ファイル:Pienza Piazza Pio II.JPG

 

ユネスコ世界遺産に登録されているピエンツァの町の中心部に位置する「ピウス2世広場」は、ピエンツァの町を「ルネサンスの理想的な都市」にしようと、多大な貢献をした教皇ピウス2世に捧げられた広場です。

 

広場のすぐ横にあるサンタ・マリア・アッスンタ大聖堂(Cattedrale dell'Assunta)には、ルネサンス期のシエナ派の画家イル・ヴェッキエッタ(Il Vecchietta)による「聖母の被昇天(Assunzione di Maria)」や子どもと一緒に即位した聖母などの貴重な絵画があります。

 

広場の左側には、教皇ピウス2世からロドリーゴ・ボルジア枢機卿(Rodrigo Borgia)、後の教皇アレクサンデル6世に寄贈された「ボルジア宮殿(Palazzo Borgia)」があり、現在は司教区博物館となっています。

 

この広場は、ピエンツァの大聖堂、ピッコロミニ宮殿に囲まれていて、「pozzo dei cani」と呼ばれる古代の井戸があり、広場の前には、時計付きの低くて大きな塔のある市庁舎もあります。

市庁舎内部には、聖母と子どもが描かれたシエナ派の貴重なフレスコ画が保存されています。

 

ピエンツァ観光:ピッコロミニ宮殿(Palazzo Piccolomini)

ファイル:Palazzopiccolomini 02 giardino.jpg

 

ピッコロミニ宮殿は、15世紀半ばにフィレンツェの建築家ベルナルド・ロッセリーノによって、教皇ピウス2世の夏に過ごす邸宅として建てられました。

 

この宮殿は、慈善団体に寄贈した最後の子孫が亡くなるまで、家族によって所有されていて、現在は宮殿の1階部分は美術館として一般公開されています。

 

この美術館には、様々な絵画の展示がありますが、イタリアの反マニエリス画家であったベンチュラ・サリンベニ(Ventura Salimbeni)によるピウス2世ピッコロミニの肖像画が際立っているホールにも訪れることができます。

 

また、ピウス2世が使用していた寝室や、15世紀に使用されていた暖炉や天井、15世紀から18世紀の家具、絵画、彫刻、フランダースのタペストリーも展示されています。

 

ピッコロミニ宮殿の本来の建築テーマは、自然や風景との調和です。

宮殿の裏側からは、オルチャ渓谷とアミアータ山の素晴らしい景色を楽しむことができるようになっています。

 

ピエンツァ観光:散策

File:Pienza italy.jpg

 

もともとピエンツァは要塞都市だったのですが、町に向かって車を走らせると最初に目につく光景が要塞都市であるピエンツァです。

その頂上からはピエンツァで最も美しい景色を眺めることができます。

 

ピエンツァは大通りと広場を中心に発展していますが、町にある小さな路地を散策すると、小さくて可愛い広場やカフェ、アーチや花が並べられたバルコニーなど、とてもかわいい一角をいくつも見つけることができます。

 

そして、必ず糸杉の並木道を歩いてみてください。

ピエンツァで必ず体験すべき事は、町を囲む小麦畑を散策することではないでしょうか。

 

ピエンツァ観光:ピエンツァ名物のペコリーノチーズを食す

ファイル:ペコリーノ ディ ピエンツァ (セレクション).jpg

 

トスカーナは美食の国イタリアの中でも最も美食の都市の一つですが、ピエンツァはカチョ(cacio:イタリア語でチーズの意)でもあります。

 

ピエンツァは、イタリア原産の羊の乳を原料としたチーズであるペコリーノ・チーズの生産で世界的にも有名です。

 

MEMO

9月初旬にピエンツァを訪れると、「Fiera del Cacio」というペコリーノ・チーズのお祭りが開催されています。

 

街中では新鮮なペコリーノから熟成したペコリーノまで、様々な種類のペコリーノを販売するお店が数多くあり、高級ワイン、手打ちパスタなどと一緒に味わうことができます。

 

有名な「ピチ・コン・カチョ・エ・ペペ(pici con cacio e pepe)」とは、手打ちパスタとチーズを混ぜた料理です。

 

ピエンツァ滞在中は、地元の郷土料理を提供してくれる素晴らしいレストランを訪れてみてください。

 

 

お薦めレストラン:Trattoria La Chiocciola
 

Trattoria La Chiocciolaは、1991年に創業されたトスカーナの郷土料理を提供しているレストランです。

 

温かいブルスケッタ、春野菜のアーティチョーク、ペコリーノを使用したパスタなど、常に新鮮な食材を使用したお料理が提供されています。

 

デザートにはティラミス、クルミのタルト、クレームブリュレ、パンナコッタなど、全て自家製にこだわったお料理になっています。

 

 

ピエンツァ観光:モンティッキエッロ(Monticchiello)

ファイル:MonticchielloPanoramaSW2.JPG

 

オルチャ渓谷の中心部、ピエンツァには、本物の美しさを今なお維持し続けている古代の村「モンティッキエッロ」があります。

 

既にエトルリアとローマの時代に存在したこの小さな村は、ピエンツァの中心部とコミュニティを結ぶ道路の役目をしていました。

 

モンティッキエッロは、中世の要塞の特徴をそのまま維持していて、ピエンツァにあるルネサンスの枠組みとは明らかに対照的な場所です。

 

頑丈な城壁と丘の上に立つ砦の塔は、シエナ共和国の支配下にあり、シエナの防衛システムの防波堤であった村の過去を象徴しています。

 

1559年のシエナ共和国の崩壊と共に、モンティッキエッロはメディチ家の支配下に置かれ、シエナの防波堤としてそれまで持っていた役割の重要性を失うこととなりました。

その後、1777年にピエンツァの管轄の一部となったのです。

 

聖レオナルドとクリストフォロの教会(Pieve dei Santi Leonardo e Cristoforo a Monticchiello)は、14世紀から15世紀まで遡るシエナ派の多くのフレスコ画が保存されています。

 

そして、この村で記述しておくべきことは、モンティッキエッロと住民で作られる人気劇場「テアトロ・ポヴェロ(Teatro Povero)」です。

 

この劇場は、ポーランドの劇場監督であるイェジー・グロトフスキ(Jerzy Grotowski)が作成したもので、村人が経済的破滅、ネオファシズムの高まり、減少する未来の世代などの壊滅的な打撃を過去・現在の映像と共に表現しているのです。

 

この演劇は、中産階級の断面図であり、地元の歴史からインスピレーションを得て、現代の課題などを問いかける内容となっています。

 

ピエンツァ:アクセス方法

ピエンツァは、旅行者にとってとても魅力的な街なのですが、これはピエンツァに限ったことではないのですが、少しアクセスが悪いのが難点です。

 

トスカーナの田舎町は山間地帯が多いため、どうしても公共交通機関が少ないのです。

 

以前は、シエナからピエンツァまでの直通バスがあったのですが、現在は直通バスが運行していない為、ブオンコンヴェント(Buonconvento)までイタリア国鉄のトレニタイアで移動し、そこからバスで向かうのが一番行きやすい方法になります。

 

シエナからブオンコンヴェントまでは電車で約30~40分ほど、ブオンコンヴェントからピエンツァまではバスで約40分ほどになります。

 

ただ、バスが日曜日は運休となり、かなり制限のある移動方法ではあるので、時間に制限がある旅行者は、シエナでレンタカーを借りるか、ツアーに申し込む方が現実的かもしれません。

 

最後に…

ピエンツァは、中世の街並みとオルチャ渓谷の絶景が楽しめる美しい町です。

建物は風景に美しく溶け込み、町からはオルチャ渓谷の最も美しいパノラマを眺めることができます。

 

ピッコロミニ宮殿の庭園からオルチャ渓谷を眺めると、ピウス2世がこころ理想の都市にしたいと思ったこともうなずける気がします。

 

フィレンツェやシエナなど、トスカーナの街を訪れることがあるのであれば、ぜひピエンツァにも立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

 

素敵なピエンツァの旅になることを願っています!