オルチャ渓谷にそびえる標高540mの丘の上にある村、カスティリオーネ・ドルチャ（Castiglione d’Orcia）。
カスティリオーネ・ドルチャは、典型的なトスカーナの村で、その中心部は、ベッキエッタ（Vecchietta）として知られる15世紀のシエナ派の画家であるロレンツォ･ディ･ピエトロ（Lorenzo di Pietro）に捧げられた広場「ベッキエッタ広場（Piazza il Vecchietta）」にあります。
この村の歴史は、南トスカーナ出身のイタリアの貴族アルドブランデスキ家（Aldobrandeschi）が所有していた714年に遡ります。
2004年に世界遺産に登録された「オルチャ渓谷（Val d'Orcia）」の一部であり、オルチャ渓谷の雄大な自然に囲まれた小さな村を探検してみませんか？
カスティリオーネ・ドルチャ（Castiglione d’Orcia）：トスカーナ中心部にある千年の歴史を持つ村
カスティリオーネ･ドルチャは、オルチャ渓谷の中心部カッシア街道（Via Cassia）から少し離れた場所にあるアミアタ山（Monte Amiata）の北斜面の丘の上にあります。
714年に初めて歴史文書で言及されたこの村は、南トスカーナ出身のイタリアの貴族アルドブランデスキ家（Aldobrandeschi）の統治下にあり、ペトラ（Petra）として知られていました。
1252年には独立し自由自治体となりましたが、次の世紀にはシエーナ共和国の支配下となり、独立を失い、14世紀にはシエナ共和国の管理課となり、シエナの貴族ピッコロミニ家（Piccolomini）やサリンベーニ家（Salimbeni）などの一族に委ねられました。
その後、カスティリオーネ・ドルチャは、フィレンツェ共和国の手に渡り、1605年にはボローニャの貴族であるリアリオ家の手に委ねられることになります。
1775年から、ロッカ（Rocca d'Orcia）、スペダレット（Spedaletto）、ヴィヴォ･ドルチャ（Vivo d'Orcia）、リパ･ドルチャ（Ripa d'Orcia）などの併合が始まり、カンピリア･ドルチャ（Campiglia d'Orcia）とバーニ･サン･フィリッポ（Bagni San Filippo）も統合されました。
その後、カスティリオーネ・ドルチャはトスカーナ大公国の一部となり、1861年からはイタリア王国に合併されました。
青銅器時代以降、エトルリア人、ローマ人が居住していたこの地域は、中世とルネサンス時代に最も繁栄した都市であるカスティリオーネ・ドルチャ。
数多くの村落に点在する歴史的及び芸術的な美しさをぜひ訪れて触れてみてください。
カスティリオーネ・ドルチャ：観光
カスティリオーネ･ドルチャの魅力的な町は、オルチャ渓谷の緑の丘の一つで、ブドウ畑と糸杉の並木通り、石やレンガの家が並ぶ典型的なトスカーナの町で、周囲の田園地帯の素晴らしい景色を眺めることができます。
この地域には豊かな歴史があり、アルドブランデスカ岩山（Rocca Aldobrandesca）からは町を見下ろすことができ、フランチジェナ通りを見下ろせる絶景のポイントにあり、1100年以上も前に建てられた古城であるテンテンナーノ要塞（Rocca di Tentennano）のテラスからはオルチャ渓谷全体の素晴らしい景色を眺めることができます。
カスティリオーネ・ドルチャは、フランチジェナ街道の古代遺跡の中心とされていて、その歴史的中心部にあるベッキエッタ広場は、時代を超えた雰囲気を醸し出しています。
ベッキエッタとして知られていたロレンツォ･ディ･ピエトロに捧げられたこの広場は、三角形の形をしていて、小石と赤レンガで舗装されており、傍には17世紀に造られた井戸があります。
また、サン･ジョヴァンニ（San Giovanni）礼拝堂の跡地にある小さな美術館「サン･ジョバンニ宮殿（Sala d’Arte San Giovanni）」も訪れてみてください。
カスティリオーネ･ドルチャ観光：テンテナーノ要塞（La Rocca di Tentennano）
オルチャ渓谷で、フランチジェナ通りを見下ろせる絶景のポイントです。
この要塞は、11～12世紀頃から存在するお城であり、シエナ共和国とシエナの名家サリンベニ家（Salimbeni）の間で長い間紛争の的となっている場所です。
テンテナーノ要塞の建設以来、この要塞は北ヨーロッパとローマを結ぶ中世の重要な道路であるフランチジェナ通りの防衛・研究などを含むあらゆる目的の重要な基地として機能していました。
1251年にテンテナーノ要塞の大規模な改修を行ったシエナ共和国（Repubblica di Siena）に譲渡されましたが、1274年にモンタペルティの戦い（Battaglia di Montaperti）の勝利軍に支払う為の借金を返済する為にサリンベニ家に譲渡したのです。
その後、サリンベニ家の所有物となっていたのですが、シエナ側は諦めず長期間の返還闘争が14世紀の間続いていたそうです。
今日では、テンテナーノ要塞で美術展が開催されるなど、観光客が訪れることができるようになっています。
テンテナーノ要塞の足元には、ユネスコ世界遺産に登録されているオルチャ渓谷が広がっています。
要塞のテラスから見る絶景は見事なものです！！
カスティリオーネ･ドルチャ観光：サン・フィリッポ温泉街（Terme San Filippo）
オルチャ渓谷のアミアータ山の森の中にある、バーニ・サン・フィリッポは、トスカーナで最も美しいスパリゾートの１つとして知られています。
また、白いクジラと名づけられた炭酸カルシウムと硫黄が鍾乳化した結晶でできた堆積物を作り出した温泉水の滝が有名です。
とても美しく、この場所で映画の撮影したり、プロの写真家や映像関係者を魅了しています。
この温泉は、エトルリア人やローマ人の時代から治療に使用されて北と言われています。
サン・フィリッポ温泉街は18世紀頃から存在していて、ホテルや治療用温泉、ウェルネスセンター、壮大なフォッソ・ビアンコ（Fosso Bianco）の景色を臨む温泉プールがあります。
硫黄、カルシウム、マグネシウムが豊富な温泉水と、静かで人里離れた環境は、心身ともに癒される場所となっています。
カスティリオーネ･ドルチャ観光：サン・フィリッポ・ベニジ洞窟（Grotta di San Filippo Benizi）
バーニ・サン・フィリッポには、温泉、鉱泉、あるいは地下水中より生じた石灰質化学沈殿岩で、緻密、多孔質、縞状など、多様な構造をもつトラバーチンの岩でできた、非常に珍しい洞窟礼拝堂があります。
サン・フィリッポ・ベニジ洞窟は、13世紀にこの場所に避難していた聖フィリッポ・ベニジ（Filippo Benizi）にちなんでつけられました。
ローマ教皇クレメンス４世（Clemente IV）の死後、教皇庁への任命を知ったフィリッポは、ローマ教皇の名誉と責任を拒否しアミアータ山に約３ヵ月間も隠れていたそうです。
映画「ローマ法王の休日」を思い出しました(笑)
この地に洞窟を見つけたフィリッポは、この場所に奇跡的に癒しの水源を見つけ、それが温泉となったと、当時の聖人伝に記されているそうです。
このようなことから、バーニ・サン・フィリッポはフィリッポを歓迎し、この洞窟を礼拝堂にしたそうです。
洞窟の礼拝堂は、今でも良く保存されていて、祭壇の上には聖フィリッポの黒い木製の胸像が保存されています。
カスティリオーネ・ドルチャ：アクセス
カスティリオーネ･ドルチャは、シエナから約55㎞の場所にあり、車で約１時間程度で到着します。
カスティリオーネ･ドルチャには鉄道駅がなく、シエナからカスティリオーネ･ドルチャまでの直通バスもないため、シエナからブオンコンヴェント（Buonconvento）までイタリア国鉄のトレニタイアで移動し、ブオンコンヴェントからバスで向かう方法になります。
ブオンコンヴェントから112番線でサン･クイーリコ･ドルチャ（San Quirico d’Orcia）まで行き、その後54A番線で「Castiglione D'Orcia Carabinieri」まで行きます。
乗り継ぎなども含めて約３時間ほどかかるので、時間に余裕のある方向けの移動手段となります。
最後に…
長い歴史を持つこの村は、全ての観光客が発見できるわけではない美しさが数多く隠されています。
トスカーナの中心部、オルチャ渓谷の丘に囲まれたカスティリオーネ･ドルチャには、有名なフランチジェナ通り沿いの重要な地域と考えられているこの都市の独立と、イタリアの数々の貴族が誕生した千年にも及ぶ長い歴史があり、中世のイタリア史を知ることができます。
オルチャ渓谷で最も美しいとされるテンテナーノ要塞など見所も多くあるカスティリオーネ･ドルチャにぜひ足を運んでみてください。
