モンタルチーノ(Montalcino):ブルネッロの故郷を歩く【イタリア】

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2023年4月29日以降、新型コロナウイルス関連の入国規制は解除されており、イタリア入国時の陰性証明書、ワクチン接種証明書の提示は不要、入国規制等も撤廃となっています。

 

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EUでは、テロの脅威、観光客の増加、継続する地域への移民流入への対応として、ヨーロッパ旅行情報認証システム(ETIAS:事前渡航認証システム)を開始する予定で、欧州旅行情報認証制度、またはETIASビザ免除は、2024年に日本からヨーロッパへ旅行するための旅行要件となります。

日本国籍保持者がヨーロッパを旅行する場合、ETIASビザ免除をオンラインで申請する必要があります。

公式サイト:ETIAS(エティアス)EU 申請ウェブサイト | ETIAS application site

 

モンタルチーノは、イタリア中部のトスカーナ州に位置し、シエナから南へ約40㎞程の手つかずの自然が残る風景を持つ丘陸地帯にあり、そのほとんどが森林で覆われた大きな一つの丘からなっています。

 

長い歴史と類まれなる美しさを備えたこの田園風景は、2004年にユネスコ世界遺産に登録されました。

 

 

世界的にも有名なワインの一つであるブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(Brunello di Montalcino)の生産地としても有名で、街の通りには数多くのエノテーカ(enoteche:ワインを収蔵する場所)が並び美しく広大なブドウ畑に囲まれています。

 

オルチャ渓谷の中心に位置するこの街には、長い歴史があり、エトルリア時代から人が定住していた記録があります。

 

何世紀にもわたってほぼ変わらない姿を保っているモンタルチーノは、訪れると16世紀の様子を垣間見ることができます。

 

 

File:View from Montalcino, Tuscany.jpg

 

モンタルチーノ(Montalcino):ブルネッロの故郷を歩く【イタリア】

恐らくエトルリア時代から人が住んでいたと言われるモンタルチーノのある丘は、フランク王国の国王であり、ローマ教会の皇帝ルドヴィクス・ピウス(Ludovicus Pius)がサンタンティモ修道院(Abbazia di Sant'Antimo)の修道院長に土地を与えた西暦814年の文書で初めて言及されています。

 

10世紀には、近くのロセッレ(Roselle)という町から逃れてきた人々がモンタルチーノに定住した為、モンタルチーノの人口が急激に増加したとされていて、その後14世紀頃までは長く平和な時代を経験し、ある程度の繁栄を享受していたそうです。

 

中世後期、ローマとフランスを結ぶ街道「フランチジェナ通り(Via Francigena)」沿いにあるこの街は、独立したコムーネだったのですが、野心的なシエーナ共和国(Repubblica di Siena)の支配下に組み込まれ、1260年のモンタペルティの戦い(Battaglia di Montaperti)以降、シエーナの衛星都市となり、シエーナが巻き込まれた様々な紛争の影響をたびたび受けることになります。

 

1555年にフィレンツェ共和国がシエーナ共和国を征服した際、モンタルチーノは約4年間抵抗を続けたのですが、最終的にはモンタルチーノもフィレンツェ共和国に降伏し、1861年にトスカーナ大公国がイタリア王国に合併されるまで、フィレンツェ共和国の管理下にあった街なのです。

 

シエナから僅か40~50㎞の距離にあるモンタルチーノは、周囲のブドウ畑で栽培された粒が大きく果皮が厚いブドウであるサンジョヴェーゼ・グロッソ(Sangiovese Grosso)から作られる世界で最も有名なワインの一つであるブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(Brunello di Montalcino)の生産で有名ですが、モンタルチーノには、ロッソ・ディ・モンタルチーノ(Rosso di Montalcino)やスーパータスカン(Super Tuscan)、モスカデッロ・ディ・モンタルチーノ(Moscadello di Montalcino)など名だたるワインが数多くあります。

 

トスカーナで最も美しい田園地帯と言われているオルチャ渓谷(Val d'Orcia)に囲まれた街からは、オリーブ畑、ブドウ畑、美しい村々が点在するアッソ渓谷(Valle dell 'Asso)、オンブローネ渓谷(Ombrone)、アルビア渓谷(Arbia)などの貴重な景色を眺めることができます。

 

モンタルチーノの歴史的中心部には、保存状態の良い中世の建造物が数多くあり、石畳の通りには数多くのエノテーカが並んでいます。

 

モンタルチーノ(Montalcino):観光

ファイル:Italy tuscany montalcino2.jpg

 

シエナからモンタルチーノに向かうと、丘の上に14世紀後半に建てられた壮大な五角形の要塞が最初に目に入ります。

 

この美しい中世の建造物には、既存の南側にある壁、サント・マルティーニ(Santo Martini)の天守閣、サン・ジョヴァンニ(San Giovanni)の塔、そして現在は礼拝堂となっている古代の聖堂があります。

File:Montalcino 001.jpg

 

スペイン人やフィレンツェ人に対するシエナの抵抗の象徴であるモンタルチーノ要塞からは、モンテ・アミアタ(Monte Amiata)、クレタ島(Crete)からシエナ、そしてオルチャ渓谷全域とマレンマの丘(Maremma)や、手入れの行き届いた田園地帯の素晴らしい景色を眺めることができます。

 

また、要塞の一角にはモンタルチーノで最も雰囲気のあるワイン貯蔵所であるエノテカ・ラ・フォルテッツァ・ディ・モンタルチーノ(Enoteca La Fortezza di Montalcino)があり、ワインの試飲体験もできます。

 

公式サイト

Enoteca La Fortezza

 

要塞から徒歩5分ほどの場所に、モンタルチーノのランドマークの一つである13世紀に建てられたトスカーナで最も美しい建物の一つで、13~14世紀に建てられた市庁舎でもあるプリオリ宮殿(Palazzo dei Priori)は時計台となっていて、その下には町の主要な広場であるポポロ広場(Piazza del Popolo)があり、この広場には14~15世紀にかけて建てられたルネサンス様式の建物であるラ・ロッジア(La Loggia)があります。

File:Montalcino, piazza del popolo e palazzo dei priori.JPG

 

要塞から歩いてすぐの場所には、1555年から1559年までフランスが街を占領していた際にフランス兵を収容するために建てられたピエリ宮殿(Palazzo Pieri)があり、ここには美しい中庭と、石の噴水があります。

また、現在は「Bar Circolo Arci」というカフェになっているので、モンタルチーノ散策の際に休憩場所として訪れてみてください。

 

ピエリ宮殿の向かいにあるシンプルな13世紀の正面玄関をもつ聖アゴスティーノ教会(Chiesa di Sant'Agostino)は、シエナ派の画家による14世紀の美しいフレスコ画が展示されています。

File:Montalcino, chiesa di Sant'Agostino - Esterno.jpg

 

教会に隣接するかつての修道院が、現在では市立教区博物館(Museo Civico e Diocesano)となっていて、14世紀の絵画や彫刻、モンタルチーノ周辺の考古学発掘から回収された工芸品などが展示されています。

 

モンタルチーノの初期のロマネスク様式の教会には、聖エジディオ教会(Chiesa di Sant`Egio)、聖フランチェスコ教会(Chiesa di San Francesco)などがあります。

 

なお、旅行者が最も訪れるべき教会の一つである、マドンナ・デル・ソッコルソ教会(Santuario della Madonna del Soccorso)はモンタルチーノで最も美しい教会と言われていて、ルネサンス期のイタリアの画家であるフランチェスコ・ヴァンニ(Francesco Vanni)やヴィンチェンツォ・タマーニ(Vincenzo di Benedetto di Chele Tamagni)の芸術作品を鑑賞することができます。

File:MontalcinoMadonnaDelSoccorso.JPG

 

聖アゴスティーノ教会から、スパニ通り(Via Spagni)に沿って歩いていくと、ドゥオーモ「サンティッシモ・サルヴァトーレ大聖堂(Concattedrale del Santissimo Salvatore)」に到着します。

File:Duomo di Montalcino - panoramio.jpg

 

サンティッシモ・サルヴァトーレ大聖堂の歴史は1818年から1832年の間になっていますが、もともとは14世紀に建てられ1832年に再建したものが現在の大聖堂となっています。

サンティッシモ・サルヴァトーレ大聖堂は、町の高台に位置していて、外の公園からは素晴らしい景色を楽しむことができます。

 

ドゥオーモからチャルディーニ通り(Via Cialdini)に向かい、カミッロ・ベンソ・コンテ・ディ・カヴール広場(Piazza Camillo Benso Conte di Cavour)まで進みます。

 

この広場には、ベンチと噴水のある美しい木陰の広場となっていて、屋外席のあるレストランなどもあり、モンタルチーノ観光の休息に最適な場所です。

 

狭くて特徴的な路地をゆっくり歩きながら、目下に広がるオルチャ渓谷の素晴らしい景色を眺めるなど、この壮大なトスカーナの丘の上の街の特別な中世の雰囲気を時間をかけて満喫してください。

 

モンタルチーノ観光:モンタルチーノ要塞(Fortezza di Montalcino)

ファイル:Fortezza-Montalcino-SI-IT.jpg

 

モンタルチーノの丘の上の町にある、とても印象的な五角形の構造を持ったモンタルチーノ要塞があります。

 

城壁は13世紀に建てられ、1361年にモンタルチーノの一番高い場所に建てられた要塞は、シエナの建築家「ミーノ・フォレージ(Mino Foresi)」と「ドメニコ・ディ・フェオ(Domenico di Feo)」によって設計されました。

 

オルチャ渓谷を横断しているフランチジェナ通りは、フランスとローマの巡礼ルートに近いことからとても重要な場所とされ、シエナとフィレンツェの領土紛争に度々巻き込まれることになります。

16世紀半ば頃、フィレンツェの実質的支配者であったメディチ家(Casa de' Medici)の征服に対する最後の防波堤となったのがモンタルチーノでした。

 

このモンタルチーノ要塞には、サント・マティーニの砦、サン・ジョヴァンニの塔、現在は要塞の礼拝堂として機能している古代の大聖堂など、既存の建造物がいくつか組み込まれています。

 

要塞の歴史は何世紀にも渡って続いており、今日では1940年代にジョヴァンニ・コロンビーニ(Giovanni Colombini)の委託によって修復され、イベントなどの開催をすることで文化的な機能を果たし、訪れた人々にオルチャ渓谷の素晴らしい景色を提供しています。

 

モンタルチーノ観光:サンティッシモ・サルヴァトーレ大聖堂(Concattedrale del Santissimo Salvatore)

ファイル:Duomodi montalcino 03.JPG

 

モンタルチーノの歴史的中心部に聳え立つサンティッシモ・サルヴァトーレ大聖堂。

 

大聖堂となる教会は、同じ名前のロマネスク様式の教区教会がかつて存在した場所に1000年頃建てられ、1462年にピウス2世によって大聖堂となりました。

 

建物の大部分が遠くから際立っており、モンタルチーノのランドマークになっています。

 

大聖堂の外観は、キリスト教建築でよく見られるティンパヌムと呼ばれる建物入口上部の壁画のない高いプロナオス(Pronaos:ギリシャ神殿やローマ神殿などで見られる入口)が特徴的な正面玄関が特徴的です。

 

モンタルチーノ大聖堂の内部には、注目すべき芸術作品が数多く保管されています。

 

シエナ出身の画家フランチェスコ・ヴァンニ(Francesco Vanni)による、イエス・キリストと父なる神との「無原罪の御宿り(Immacolata Concezione)」の絵画が展示されています。

正面の祭壇には、フランチェスコ・ヴァンニによる初期の作品である砂漠の洗礼者聖ヨハネ(San Giovanni nel Deserto)を描いた帆布が飾られています。

 

11世紀に建てられたモンタルチーノ大聖堂は、その後の地震や劣化によって古びてきたため、19世紀初頭にシエナ出身のアゴスティーノ・ファンタスティーチ(Agostino Fantastici)によって設計され、再建され、現在のモンタルチーノ大聖堂となっています。

 

モンタルチーノ観光:サンタンティモ修道院(Abbazia di Sant'Antimo)

ファイル:モンタルチーノ-Sant'Antimo2.jpg

 

モンタルチーノを訪れる予定で、時間に余裕のある方は、オルチャ渓谷の素晴らしい風景の奥深くにある、かつてのベネディクト会修道院であるサンタンティモ修道院(Abbazia di Sant'Antimo)に訪れてみてください。

 

モンタルチーノから数kmほど離れたカステルヌオーヴォ・デッラバテ(Castelnuovo dell'Abate)には、トスカーナで最も美しいロマネスク様式の一つとされるサンタンティモ修道院があります。

 

12世紀初頭に建てられた人里離れた美しい修道院は、300年前の初代神聖ローマ皇帝カール大帝(Charlemagne)の時代に設立されたと言われていて、かつては非常に強力な修道院であったサンタンティモ修道院は、19世紀には厩舎として使用されるまでに衰退しました。

1870年には、元の美しい修道院に復元され、現在ではロマネスク様式で建てられた最も印象的で美しい建物の一つとしてみなされるようになりました。

 

修道院の構造は、カステルヌオーヴォ・デッラバテの採石場から集められた、白色または半透明の鉱物であるアラバスターのトラバーチンでできています。

この石は、様々な季節の空と周辺の田園地帯の色の変化に応じて、絶えず変化する輝きの効果を与えています。

 

修道院の正面は、垂れ下がったアーチのある王冠と、中央にある9世紀のロマネスク様式の表玄関が特徴です。

 

鐘楼はロンバードロマネスク様式で、東側には女性の頭部を持つ翼のある雄牛や、4人の伝道者のシンボルに囲まれた聖母と子どもが彫刻されています。

 

内部には、十字型の柱と交互になっている柱で分割された3つの身廊があり、植物や凶暴な獣の形をした装飾がされています。

 

そして、セデス・サピエンティアエ(Sedes Sapientiae:聖母像の中世の称号)の図像に聖母子像を描いたウンブリア派(Umbria)の木製の像、13世紀の木製の十字架、シエナの墓場からキリストが昇るフレスコ画のルネット(壁面の半円形の部分)が保存されています。

 

 

モンタルチーノ(Montalcino):アクセス

車で訪れる場合は、城壁の外側にある駐車場を利用することができます。

有料・無料どちらもあるので、駐車場に到着した際に確認しましょう。

 

モンタルチーノには鉄道駅がなく、シエナからモンタルチーノまでの直通バスもない為、シエナからブオンコンヴェント(Buonconvento)までイタリア国鉄のトレニタイアで移動し、ブオンコンヴェントからバスで向かう方法が一番行きやすい方法になります。

 

ブオンコンヴェントからモンタルチーノまでは、バスで約30分ほどですが、時間の制約がかなりあるため、時間に余裕のある方向けの方法になります。

 

最後に…

イタリアワインの名産地であるモンタルチーノは、ワイン愛好家や歴史好き、自然を愛する人々がこぞって訪れる場所になっています。

 

城壁に囲まれた歴史地区には、小さな路地や階段が縦横無尽に入り組んでいて、徒歩で散策する旅に最適な場所になっています。

 

日帰り旅行や週末旅行にぴったりの場所ですが、オルチャ渓谷を訪れる際に拠点としても便利な場所になっています。

 

 

モンタルチーノで中世の時代に浸ってみてはいかがでしょうか。